社長さんのための労働基準法基礎講座

 第1回 
表現上のご注意 当ページ内では、使用者(個人商店を含めて)を社長さん 
またその事業所を会社 労働者を社員さんという言い方をしております。

 知っているようで 意外と知られていない労働基準法をわかりやすく解説します。
 一応の予定は、隔週連載の10回程度を予定しています。 程度と言うのは、気分が乗れば続きますし… 人気がないとこのコーナーは、即打ち切りちょっとヤバイ目の連載です。乞うご期待!!

1回目は、労働基準法の考え方と 絶対にやっちゃいけないこと・・・

 労働基準法は、昭和22年に制定された法律です。以来改正が行われていますが この法律ができた時は、日本が終戦を向かえて 占領下におかれていた時なのです。 戦前に行われていた 社員さん(労働者)を縛る労働条件をことごとく排除すべく作られました。 したがってこの法律を読んでいると前時代的な話しちゃうのと思える箇所がいっぱい出でてきます。 しかも社長さんを規制することばかり書いてあります。 この点を理解してトラブルを未然に防ぐのが賢い社長さんの道なのです。

なんで 社長をさんを規制するの?

 賃金を支払う側とその賃金で生活している社員さんでは、おのずと力関係が出来てきます。 だから力の関係の強い社長さんの方にに規制をかけて 労働条件を対等の立場で決定できるようにした訳なのです。

ただ 最近 この基準法を逆手にとって労働者の権利のみをフルに使う不良社員がいてるのです。そんな不良社員に引っかからないようにしなければなりませんね・・・

労働基準法第1条

@ 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
A この法律で定める労働条件は、最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由にして労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように勤めなければならない。

 さて 第1条、ここで覚えておいて欲しいことは、「この法律は、最低条件なのでこれより低下させちゃいけない!」ということ 「社員さんにとって有利な条件は、どんどんやってあげなさい!」と言うのがこの法律の趣旨です。
 ただしここで気をつけないといけないは、社員さんに一度有利な条件を与えたら それは、社員さんの権利になって 次に条件を落とす時 第二項の「労働条件を低下させては、ならない」と言う部分に抵触してしまうと言う点です。行政解釈では、社会経済情勢の決定的な変化があればそれは、この条文に抵触しないとあるのですが… 『労働条件の低下をしたことによって労働者の受けるメリットとデメリットを天秤にかけてデメリットが著しく大きくならないようにする。』これが認められる場合です。
 具体的に言えば 賃金の切り下げを行う代わり雇用を確保(リストラをしない)すると言ったような場合です。

賢い社長さんの選択… 

社員さんに一度有利な条件を与えたら それは、社員さんの権利になってしまうのか・・・労働条件を決める時は、慎重にしよう

あと基本的な所を かいつまんでお話しすると

 パートでもアルバイトでも働いてもらう以上必ず労働基準法の適用を受けます。
 例外として 『メイドさん ウフッ』じゃ無かった 『家政婦さん』『お手伝いさん』と呼ばれる人(会社から派遣されて来る人は、労働者で基準法の適用があります。)と同居の親族のみの会社の社員さんは、適用されません。

 社長さんは・・・ 社員の国籍、信条、社会的身分を理由に 賃金、労働時間その他の労働条件に差別的取り扱いをしては、いけません。(法3条) これは、雇い入れた後についてなので 採用については、社長さんの裁量権で自由に採用出来ます。 「こいつ信条気に入らないから不採用」は、OKです。。。OKですけどあまり言わない方が良いでしょう。

 賃金については・・・ 社員さんが女性だからといって男性に比べて 高いとか低いとかの差別しちゃだめです。(法4条) 男女同一賃金の原則と言うのは、労働基準法では、労働条件の内の賃金に関してのみ問われています。。。じゃその他の昇進なんかで差をつけてもええやんかと お思いでしょうがそうは、問屋がおろしてくれません、男女雇用機会均等法っつうのがあって 「差別的だ・・・本来昇進していたであろう分払え」なんて訴えられると大変です。その他の労働条件にも差をつけないでおきましょうね(^^)

ちょっと 社労士の受験勉強中仲間内で話題になったことです。
  キャバレー・ラウンジの綺麗なお姉さん(ホステスさんとも言いますね)と 同じ職場で働く ボーイさん 時間給全然ちゃうやないの…って 同じ職場でも職務が違うからええのとちゃう…ということで決着がついたのですが このボーイさんが 仮にホストの場合 同一の賃金である必要があります。 もっとも あの方たちは、請負で働いている例も多いので一概に言えませんけど・・・

 労働基準法の趣旨がわかっていただいたと思うので 社長さんが絶対にやっては、いけない事はなんでしょう??

強制労働! これは、労働基準法の中でも一番重い罪が課せられます。(1年以上10年以下の懲役又は、20万円以上300万円以下の罰金) たこ部屋なんてもってのほかです。。。 

 これに繋がるものも全て禁止されます。ちょっと列挙してみると

 損害賠償額を予定すること:弁償する金額を定めてお仕事させるのは、禁止(現実に生じた分を請求するのは、OK)

 具体的には、小学校のつるかめ算の問題にあるのですが 「Aさんは、皿洗いのアルバイトをしています。1枚洗うと50円もらえますが、1枚割ると50円が貰えないばかりか30円払わないといけません。 お皿を10枚洗い終わった時、Aさんは、賃金として180円もらいました。さてAさんは、お皿を何枚割ったのでしょうか?」 これは、1枚割ると80円差し引くと言う契約なので労働基準法違反になります。 正しい書き方は、「1枚洗うと50円もし割った場合実費を請求する。」です。正規の賃金を一度支払った上で 損害賠償分を請求してもらうと言うことになります。 (ただ最低賃金法の絡みは、無視してくださいここで説明するとややこしくなるので・・・)

【つるかめ算の例題の答えは、Aさんは、4枚割りました。計算式は、算数のページじゃないので省略します】

中間搾取の排除:奴隷的従属関係や賃金のピンハネを禁止する目的なんですが・・・

 「じゃ 人材派遣会社は、中間搾取してるのとちゃうの!」と言う声があちこちで聞こえています。(因みに所長も派遣社員しています。) 法律は、『何人も 法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない』ちゃんと『労働者派遣法』と言う法律があるのです。したがって中間搾取に当てはまらないのです。。。ク〜〜〜この法律さえなければもっと時間給上がるのにといつも思う所長であった。。。

 前借金と賃金との相殺の禁止:社長さんの行いについて規制しているので 相殺が社員さんの自由意志で相殺を願い出た場合は、禁止されないのですが・・・

 例えばこういうこと  以前介護保険法が成立してホームヘルパーが不足していた時に こういう求人広告がありました。「ホームヘルパー2級講座を無料で受けることが出来ます。ただし資格取得後3ヶ月間当所で労働可能な方…」ここで3ヶ月の間に無条件に離職(お仕事を辞めること)が可能であれば問題は、無いのですが そうでない場合 例えば「受講料を払って!」と一言でも言おうものなら そくこの項目に引っかかってしまいます。 実際どうでしょう 会社の方は、受講料を払ってでもヘルパーさんを囲い込みたいと言う気持ちは、判るのですがこの書き方は、労働基準法違反になってしまいます。 事実この手の相談は(社員さんから)多いです。例えばタクシー運転手さんが2種免許を会社の費用で取得し即辞めるパターン これに対して「その費用出せ」と言われていると労働基準監督署への相談が多いです。残念ながら社長さんの方から「その費用出せ!」とは言えないのです。 強制貯金の禁止:社員さんが退職するのを阻む目的で強制的に貯金させることを禁止しています。

 社内預金そのものを禁止ているわけではありません。ただ社内預金をするときは、労使協定を結んで貯蓄金管理規定を作り この低金利時代に年0.5%以上の利息をつけないといけませんから 止めておきましょう!!以上の項目は、社員さんの自由意志や身分を拘束するものとして禁止されています。

労働基準法は、社員さんの権利を守る為の法律です。

しかし裏を返せば この法律をクリアすると社長さんの不利にはならないということなのです。


 労働問題で一番のネックになることは、社員さんの退職時にごてられないように円満退社してもらうのが 社長さんの腕の見せ所です。そのこともおいおい書いていくつもりです。 今回は、、この辺で・・・

次回は、「社員さんの雇い入れについて」を予定しています。
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